ネタバレあり
美しき鬼・珠世。
『鬼滅の刃』には、さまざまなヒロインが登場しますが、人間に協力した鬼・珠世は、その中でも異質な存在です。
作中では、珠世こそが鬼舞辻討伐に最も大きな影響を与えたと言えるほど、物語のキーパーソンとなる重要人物。
- 珠代はなぜ鬼でありながら、鬼の始祖・鬼舞辻無惨を滅ぼそうとしたのか?
- 珠世がたどった悲しい結末とは?
- 愈史郎を鬼にした真意とは?
- 珠世と無惨の関係
- 珠世が鬼になった経緯
- 珠世の罪
- 愈史郎を鬼にした真意
- 珠世の最期
【この記事を書いた人】
・年齢1ケタの頃からマンガを愛する2児ママ。
・鬼滅の刃考察動画をYOUTUBEにて配信。
美しき鬼・珠世
引用:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴
鬼の始祖・鬼舞辻無惨は、自分の血を人間にわけあたえ、鬼を作り出します。
無惨が、鬼を増やす理由は、ひとえに太陽を克服する体質の者を生み出すため。
そして、無惨が作り出した鬼の中に、「医学の知識」を持つ女性の鬼・珠世がいました。
珠世とは
無惨は、病気を患っていた珠世に対して、
鬼になれば愛する家族と生きていくことができる・・・
などと甘い言葉で珠世を騙して、鬼にしたのではないでしょうか。
そんなことがわかっていれば 私は鬼になどならなかった!!
病で死にたくないと言ったのは!!
子供が大人になるのを見届けたかったからだ…!!
引用:鬼滅の刃6巻・第138話「急転」
珠世が最終戦で無惨と対峙した際、悲痛な叫びをあげていました。
しかし、鬼になった珠世は無惨の呪いを受けていたため、無惨に従うほかありませんでした。
珠世は屈辱のなか、無惨を倒す機会を虎視眈々と狙っていたのです。
珠世の「特別性」
引用:鬼滅の刃21巻
直属の配下の鬼ですら、たまに言葉を交わす程度の無惨が、わざわざ連れて歩くほどの鬼が珠世でした。
鬼の思考を読むことができる無惨。
珠世が無惨に対して持つ憎悪の感情は、もちろん理解していました。
それでも珠世を、傍らにおいた理由は何でしょうか?
それは、珠世が持つ医学の知識によって、太陽を克服する完全な身体を手に入れようとしたからに他なりません。
珠世の医師としての働きから、彼女は無惨以上に医学的知識を持っていたと思われます。
無惨は「鬼として」の肉体の不完全さを克服するため、「陽光」を無効化する手段を探し、頭脳明晰な者・医学的知識にたけた者を探していたのでしょう。
鬼の思考を読むことができる無惨にとって、珠世の知性の高さは、当然無惨も認識していたものと思われます。
そのため、無惨は珠世を自分の監視下に置き、太陽克服のための医学的知識を利用しようと考えていたと推測されます。
無惨が、病に侵された珠世に同情して鬼にしたのではないか?という説もありますが、おそらく「同情」という理由の可能性は極めて低いと考えられます。
公式ファンブックによれば、無惨は「サイコパス」のような素質を持っています。
人間的感性の持ち合わせがなく、共感能力が極めて低い
引用:鬼滅の刃「公式ファンブック2」
同情して共感することなどないでしょう。
むしろ、自分も不治の病に侵されたことがあるので、弱った状態の珠世につけこめば鬼化の誘いにのるに違いないと思ったのでしょう。
無惨のお気に入りといえば、下弦の伍・累や、新上弦の肆・鳴女、などが挙げられます。
累も珠世と同様に病に侵されていましたが、鬼にするために都合がよかったものと思われます。
寂しさから家族を形成することも許されていました。
鬼は無惨の呪いにより群れをなすことを禁じられています。しかし累は他の鬼たちと家族のような生活をすることは、それ以外になんの関心もないと、時折行われる下弦会議で確認されていたからでしょう。
鳴女についても、空間操作や、探査能力の高さ、その利便性と情報の正確さから無惨に重宝されていました。
無惨にとって、鬼は自分に利益をもたらすかどうかだけが重要であり、同情など人間的な感情は皆無だと考えられます。
珠世の外見
引用:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴作
医師である鬼・珠世は知的で極めて美しい女性でした。
珠世に付きそう鬼の愈史郎は、珠世が怒っても、笑っても、悲しんでも、どんな姿も美しいと言ってなかばストーカーのごとく珠世のそばから離れません。
珠世と出会った炭治郎は、珠世に微笑みかけられて、頬を赤らめてしまうほど、珠世は美しい女性でした。
それを見た愈史郎の殺気立った姿は鬼滅ファンならだれもが知るところですよね。
そのようにとても容姿が美しい珠世ですが、公式ファンブックによると、彼女の肉体年齢は19歳。
童顔で少女のようにも見えるため、15~16歳ぐらいに間違われることもあったとか。
しかし、若い見た目とは裏腹に、高い教養を持ち、医学の知識を持って人間社会に紛れ込んでいました。
作中で珠世は、自分の体を改造して、少量の人間の血を飲んで生きていることが語られますが、改造した体になるまでは、人喰いをやめ、動物の死骸などを食べて飢えをしのいだということです。
美しく、上品で、穏やかな珠世の姿から想像できないような、凄絶な過去がありました。
無惨への復讐を誓う珠世が、辛辣な苦汁をなめながらも、心が折れなかった理由はなんでしょうか?
それは、無惨を唯一、死に追い込んだ継国縁壱の存在。
珠世と継国縁壱の意外な接点について見ていきましょう。
珠世の怒り
引用:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴
無双を誇った無惨。
しかし、戦国時代に出会った剣豪・継国縁壱に敗北したことがあります。
そのとき傍らにいた珠世は、命からがらその場を脱出した無惨に、こう叫びました。
死ねば良かったのに!!生き汚い男!!
引用:鬼滅の刃21巻・第187話「無垢なる人」
無惨を打ち漏らしたことで、痛恨の念に伏す珠世を見て、縁壱は、鬼でありながら無惨を倒したいと思う珠世に、他の鬼とは違う特別なものを感じました。
そして縁壱は、「無惨を倒したい君の想いを信じる」という言葉を残して、珠世を殺すことなくその場を去りました。
珠世はこの言葉を糧に、生きていく決意と、無惨を倒すことを固く心に誓うのです。
珠世の罪
引用:鬼滅の刃21巻
珠世は、無惨によって鬼化させられ、一時的に理性を失い、愛する夫と子どもを、自らの手で殺害した珠世は、の後は、自暴自棄となり、大勢の人たちを喰い殺しました。
「夫殺し・子殺し」
そして大勢の人々の命を奪った罪を背負うことになった珠世。
無惨に騙されてしまったとはいえ、奪った命への責任はとてつもなく大きいものです。
無惨への復讐心は相当なものだったでしょう。
珠世の記憶
通常、鬼化した人間は、理性と記憶を欠損します。
しかし、珠世はそれらをいったんは喪失したものの、そのあと記憶・知性ともに、人間時代のものを回復しています。
鬼であっても、実力上位の者は、記憶を鮮明に維持できます。
このことから考えても、珠世は鬼としても秀でていたことがわかりますね。
鬼を人間に戻す薬
引用:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴
無惨のもとを離れた珠世は、「無惨を人間に戻す薬」を作ることに没頭します。
鬼を人に戻す方法はあります
どんな傷にも病にも
必ず薬や治療法があるのです
引用:鬼滅の刃2巻・第15話「医師の見解」
日輪刀で戦うしかなかった鬼殺隊に、「薬」という「新しい戦い方」の選択肢をもたらしたのが、珠世でした。
珠世の医学の知識は、鬼との戦いを打破するための起爆点となっていきます。
蟲柱・胡蝶しのぶとの共闘
引用:鬼滅の刃22巻
産屋敷耀哉の申し出により、珠世は鬼殺隊の本拠地で蟲柱・胡蝶しのぶと鬼舞辻を倒すための薬の共同開発を始めます。
しのぶの協力もあり、薬の開発は劇的に進みました。
しのぶは、藤の花の毒を使って、鬼を倒す方法を模索しましたが、珠世が研究するのは、「鬼を人間に戻す薬」
鬼を人間に戻してしまえば、鬼のパワーもなくなるので、倒す必要もありません。
賢く知的な珠世らしい、効果的な戦略をとっていると言えます。
鬼に最愛の姉を殺され、鬼を憎んでいた胡蝶しのぶでさえも、鬼の珠世の聡明さ、賢さ、無惨を倒すための長年の研究の結果を認め、「あの人はすごい方です。尊敬します。」と認めるほどです。
しかし、そんな珠世でも、無惨を倒すためにどうしても足りないものがありました。
それは、無惨を逃がさないよう、「夜明けまで戦ってくれる者」です。
なぜなら、無惨は時間さえあれば、全ての薬を分解し無効化してしまうから。
縁壱が亡くなって、長い時間探し続けたその人間が竈門炭治郎でした。
鬼となった者にも、
「人」という言葉を使ってくださるのですね。
そして助けようとしている。
引用:鬼滅の刃2巻
浅草で出会った炭治郎は、鬼に対しても「人」のように接していました。
それを見ていた珠世は、かつて自分を信じてくれた継国縁壱の面影を重ねたのかもしれません。
この出会いが、無惨を葬り去るために必要な運命の出会いとなります。
鬼舞辻無惨にとっての珠世
引用:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴
愈史郎や、炭治郎、禰豆子には、女神のように優しい珠世でしたが、無惨に対する彼女の怒りは、激しい狂気に包まれていました。
無惨の耳元でささやく場面があります。
薬で無惨を危機に追いこんだ珠世。
さぁお前の大嫌いな死がすぐ其処まで来たぞ
引用:鬼滅の刃22巻・第196話「私は」
かつては「お気に入りの鬼」として、無惨は珠世をそばに置いていました。
しかしその珠世が、無惨の生命を消すために、首元に腕を絡ませて、ほほ笑みながら死を予告するのです。
この珠世の姿は鬼そのもので、美しくも恐ろしい。
無惨は珠世を鬼にしたことを激しく後悔したことでしょう。
消えない罪
医師として人間を救い、無惨との戦いに大きな貢献をもたらした珠世でしたが、「夫殺し・子殺し」の罪のため、最後は地獄へと進むことになります。
かつて珠世は自らを「鬼ですから」と言って、悲しそうに顔をふせたことがあります。
彼女は鬼として生き続けることを望んでいたわけではありませんでした。
あれほどの薬を開発できた珠世なら、別の選択肢がいくつかあったはずです。
人間になることもできただろうし、鬼のまま、もう少し生きることもできたでしょう。
しかし、愛する家族を殺された敵討ちだけは自らの手で成し遂げたかったはずです。
そして、無惨を倒すため薬を注入するためには人間の身体では持ちこたえることは不可能でした。
そのため、鬼として自ら無惨に薬を注入しました。
愛する家族を死に追いやった無惨に対する復讐という、珠世の強い執念が、人間に戻ることなく、
鬼のまま最期を迎える結果になったのです。
そして無惨の企てとはいえ、鬼となった自分が家族を手にかけた罪の償いをしなければならないことも、当然ながら、珠世の心に重くのしかかっていたことでしょう。
愈史郎の存在
引用:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴
珠世がたった1例だけ鬼にすることを成功させたのは、200年の間で愈史郎ただ一人でした。
珠世が愈史郎に施したこの処置は、実は残酷なものです。
珠世は、人喰い鬼になることを知らされず、鬼になる提案を無惨から受けました。
そして、今度は珠世自身が、余命いくばくもない愈史郎に対して、鬼になるかどうかの選択を迫ることになります。
生きたいと思いますか 本当に 人でなくなっても生きたいと
人でなくなることはつらく苦しい
引用:鬼滅の刃3巻
鬼となれば、命は助かっても、一人寂しく、孤独な、辛い人生が待ち受けていることを愈史郎に静かに説く珠世。
なぜ、そうまでして愈史郎に鬼になるための提案をしなければならなかったのか?
それは、愈史郎を延命させるためだけでなく、無惨討滅のための血の研究の一端を担っていたためだと考えられます。
珠世が人間ではなく、鬼としての最期を迎えた理由のひとつに愈史郎への懺悔の意味合いも、少なからず含まれていたのかもしれません。
珠世の最期
引用:鬼滅の刃23巻
夫を殺し、子を殺し、大勢の人を殺した珠世。
その後、医学の知識を持って無惨討伐の功労者となりましたが、鬼として地獄へ行ったとされています。
鬼滅の刃の最終話の扉絵で、珠世らしき人物が、鬼殺隊の人々とは別の方向へと歩いていく姿が描かれています。
無惨との戦いの中で、亡くなっていった鬼殺隊の者たちは天国へ向かい、その反対へ向かっている珠世と思われる人物は地獄へ向かっていることを指し示されているようです。
また、現代編で作品に登場した人たちが転生していますが鬼だった者たちは一切出てきません。
珠世の姿もありませんでした。最終の扉絵と現代編で珠世が居なかったことが珠世が地獄へ行ったと言われる所以です。
無惨を葬り去って、数えきれないほどの多くの人の命を救った珠世でしたが、それでも地獄へと向かわなければならないのは、鬼となり、家族をはじめ多くの人を死に追いやった罪のためです。
これは筆舌に尽くしがく、非常に無念と言えます。
しかし先ほど申し上げた通り、珠世自身が鬼として最期を迎え、多くの人の命を奪った罪を償うことを選んだ結果です。
人の命を奪うということが、それだけ重い罪だということを、作中で強く訴えられていることがよくわかりますね。
未来への希望
引用:鬼滅の刃21巻
悲しい結末ですが1つの希望も見出されていました。
ファンブックの大正コソコソ噂話で愈史郎が、珠世に「生まれ変わったら夫婦になってほしい」と約束します。
珠世も微笑んで、頷いてくれたそうですが、その後の内容に胸が熱くなります。
「もしかしたら数百年後に地獄で罪を償い、生まれ変わった珠世を見つけて、その頃には、愈史郎の鬼の血も薄くなり、2人寄り添い人間として年を重ねたかもしれません」とあります。
珠世と愈史郎の想いを考えると、その奇跡を願わずにはいられませんね。
まとめ
今回は、鬼の始祖・鬼舞辻無惨を滅ぼすことに貢献した美しき鬼・珠世について考察しました。
彼女が鬼になった経緯や、無惨への凄まじい復讐心、そして人を殺めたことへの贖罪と後ろめたい思いを見てきました。
理不尽命にも抗い、希望を捨てず戦い続けた珠世。
多くの人が彼女の生き様に心を動かされたことでしょう。
珠世と愈史郎の想いを考えると、二人が幸せになる未来を願わずにはいられませんね。
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