ネタバレあり
今回は、我妻善逸の兄弟子「獪岳(かいがく)」について詳しくご紹介してみたいと思います。
獪岳は、初登場時から「消えろよ」という強烈な暴言を善逸に対して吐きかけ、「嫌い」「クズ」「かわいそう」とネットやSNS上で様々な言葉で評されています。では、本当の獪岳はどのようなキャラクターなのでしょうか?
善逸と同じ師のもとで修行に励んでいた獪岳と善逸。彼らの仲はあまり良好とは言えず、二人の間には特別な因縁が存在するようです。
さらに、獪岳はある柱の過去とも深く関わっています。
では本題に入っていきましょう!!
【この記事を書いた人】
・年齢1ケタの頃から30年以上マンガを愛する2児ママ。
・電子コミック歴6年(学生時代も入れると10年)
- 獪岳の壮絶な過去
- 善逸と獪岳の関係
- 鬼殺隊に入隊した獪岳
- 獪岳はクズなのか
獪岳(かいがく)とは
獪岳(かいがく)は、鬼殺隊の元鳴柱・桑島慈悟郎(くわじまじごろう)の弟子であり、善逸の兄弟子でもあります。彼の初登場は那田蜘蛛山の善逸の回想の中でした。桑島の厳しい修行に耐えかねて泣き言を言い、逃げ出そうとした善逸に対して、怒りながら桃をぶつけるシーンが話題となりました。当初は獪岳の名前が公表されていなかったため、鬼滅ファンの間では「桃先輩」と呼ばれ、注目を浴びました。
謎に包まれていた善逸の兄弟子・獪岳の素性は、17巻145話「幸せの箱」で明らかになります。
獪岳は孤児だった
善逸と同じく、獪岳もまた親も家もなく、孤児として困難な生活を送っていました。特に印象深いのは、上弦の壱・黒死牟との遭遇で生命の危機に立たされたシーンです。このとき、獪岳は孤児の時代を思い出し、飲み水も乏しい状況で、道端の泥水をすすってで生き抜いた回想が明らかになります。獪岳は、生きるか死ぬかの瀬戸際で、何とか生き抜いていたんですね。
自分の力ではどうしようもない状況に胸が痛む・・・。
そんな獪岳を助けてくれたのは、師匠である桑島(以下じいちゃん)、
ではなく、なんと鬼殺隊の「岩柱・悲鳴嶼行冥」でした。当時、悲鳴嶼は鬼殺隊には入っておらず寺の住職をしながら身寄りのない子ども達の世話していたのです。
獪岳はじいちゃんの弟子になるまえは悲鳴嶼行冥の寺の子として育てられていた!
寺での生活
生きるか死ぬかというところで悲鳴嶼に助けられた獪岳。その後の生活はどんなものだったのでしょうか?
ここからは悲鳴嶼行冥の視点で獪岳がいた寺の生活をみていきます!(16巻135話「悲鳴嶼行冥」)
寺には悲鳴嶼と獪岳のほかに7人の身寄りのない子どもが暮らしていました。そして悲鳴嶼はこう思っていました。
皆血の繋がりこそ無かったが仲睦まじくお互いに助け合い家族のように暮らしていた。
引用:鬼滅の刃16巻135話「悲鳴嶼行冥」
悲鳴嶼の回想シーンでは、寺の子たちと獪岳と思われる少年が笑いながら食卓を囲む姿が描かれています。その様子は幸せそのもの。
死と隣り合わせの環境から脱することができ、悲鳴嶼という保護者のもと血の繋がりがない子たちと助け合って生活できるようになっていた。
しかし、獪岳は決してやってはいけない恐ろしい事件を引き起こしてしまうのです・・・。
寺のお金を盗む
獪岳は、寺のお金を盗んでしまい、その行為が子どもたちに発覚し、結果的に寺から追い出されてしまいます。
この盗みはおそらく「貧困」からくるものでしょう。
悲鳴嶼自身も「食べるものが少なくやせ細っていた」と自身の回想で振り返っています。
彼は8人の子どもをたった一人で養っていかなければならない大変な状況にありました。さらに、悲鳴嶼自身は生まれつき目が不自由で、子どもたちは彼を支える必要があると感じていたことから、生活は非常に厳しいものだったでしょう。
みんなで協力しながら生活していたにもかかわらず、獪岳は
「おなかが空いて我慢できなかった」
「貧しい生活から逃れたい」
といった思いからお金を盗んでしまった可能性が高いです。生活の困難さからの行為だったと思われます。
「おなかが空いたから皆の食べ物を買いに行こうとした」という説も考えられますが、17巻の獪岳の回想で「盗んだ」と自ら認めていたことから、この仮説は成立しないでしょう。
貧しさから寺のお金を盗んだと考えられる。
獪岳と寺の子たちとの関係
寺のお金を盗んで、子ども達に追い出された獪岳。協力し支え合っていた家族のような存在だったはずが、なぜ追い出されてしまったのでしょうか?
獪岳と子どもたちの回想シーンから双方の関係をひも解いていきます。
金を盗んだことを罵られようが
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」獪岳の回想
獪岳は、お金を盗んだことを「罵られた」と思っています。
獪岳を追い出したこともごめんなさい。だけど理由があるの。嘘じゃないよ。
引用:鬼滅の刃23巻200話「勝利の代償」
寺の子たちは、「理由があって追い出した」と正当性を主張しています。獪岳が「お金を盗んだから追い出した」という理由です。
獪岳は、自身が「悪者」とされたことを自覚しており、寺の子どもたちも「理由がある」と正当性を主張していました。心理的な側面は一旦置いておいても、獪岳が「悪者」であり、周囲の子どもたちが「正当」な存在として位置づけられていたようです。
獪岳が寺から追い出された本当の理由
しかし、こんな声も聞こえてきそうです。
「獪岳がお金を盗んだのはわかるけど、よってたかって一人を責める(いじめる)のはどうなの?」
「盗むのは悪いけど、貧しさを考えるとそうしたくなる気持ちもわかる。」
「夜の森に子ども一人を追い出すなんて危険すぎる!!」
言われてみるとそうだな~
子ども達が獪岳をいじめていたのかな?
しかし、寺の子どもたちはおそらく、純粋にこれまでの生活を守りたいと願っていたのでしょう。
後で詳しく説明しますが、目の見えない悲鳴嶼に代わって、身の危険も顧みず、生活を守るために奮闘する子どもたちであることがわかります。
獪岳がお金を盗んだとき、寺の子どもたちは、おそらくこんな気持ちがだったでしょう。
- みんなの生活のためのお金を盗むなんて許せない。
- 貧しいけど、寺での共同生活を守りたい。
- 目の見えない悲鳴嶼さんを助けたい。
- 自分自身もおなかが空いて辛い思いをしている。
しかし、「追い出した」行為が引き起こす可能性については、あまり深く考えていなかったか、想像できなかったため、その後の悲劇を引き起こしてしまったと考えられます。
獪岳が犯した過ち
獪岳は子どもたちに追い出された後、夜の森で鬼と遭遇します。絶体絶命の大ピンチに獪岳は自身の命を守るため、信じられないような提案をしました。それは、「寺に残る子どもたちと悲鳴嶼を鬼に差し出す」という恐ろしい取引をしてしまったのです。
絶対やっちゃダメだけど、命が危険にさらされたら助かりたい気持ちはわかる。
でもせっかくみんなで仲良く暮らしていたのに、自分の身代わりにするなんて…。
寺の子たちは獪岳を追い出したあと、こう思ったでしょう。↓↓↓↓↓↓
本当に鬼に会うことなんてない。
きっと獪岳は反省してかえってくるだろう。
行く当てもないから帰ってくるだろう。
そんなに大変なことなんて起こらないはず。
しかし、悲劇は起こってしまいます。
悲鳴嶼たちが住んでいた地域には、夜になると鬼除けに「藤の花の香炉」を焚く習慣がありました。この香炉のおかげか、それまで鬼に遭遇することがなかった子どもたちにとって、鬼の脅威は感じにくいものだったのかもしれません。
悲鳴嶼たちの寺は鬼の襲撃に遭い、7人のうち6人の子どもは鬼に殺され、悲鳴嶼は子ども達を殺した容疑として投獄されます。一人だけ生き残った寺の子ども・沙世も心に深い傷を負ってしまいます。
引用:鬼滅の刃16巻135話「悲鳴嶼行冥」
獪岳は子どもであっても許されない大きな過ち、取り返しのつかない重い罪を犯しました。しかしお金を盗んだ理由が貧しさであったり、まだ子どもだったことを考えると、同情の余地はあるものの、その代償は計り知れないと言わざるを得ません。
師匠・桑島との出会い
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」
悲鳴嶼や寺の子どもたちを犠牲にして生き延びた獪岳。
また身寄りのない生活に戻ります。
しかし桑島慈悟郎(じいちゃん)に拾われ「雷の呼吸」を伝授されます。
過ちを犯してしまったけど改心して償う人生になるのかな?
罪を償ってくれることを期待しよう!
じいちゃんに拾われその後の生き方に改善はみられたか?というと残念ながら答えは「NO」でした。
獪岳はいつも何かに「不満」を持っていました。
どんな時もアンタからは不満の音がしていた
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」善逸の回想
彼は生きるための「努力」を惜しまず、また善逸に対しても真っ当なことを言います。「先生は元柱ですごい人!そんな人から指南してもらえるなんてスゴイことなんだぞ!」と。同時に、自分も技術を向上させるために精力的に修行に励みます。
この時、善逸は「死ぬ」「もういやだ」「無理」といったネガティブ発言ばかりで、客観的に見ても獪岳の方が正論を唱えています。
しかし、そんな獪岳にはいつも「不満」が付きまとっており、善逸によれば、いつも心の中の「幸せの箱」に穴が開いており、幸せで満たされることがなかったとのことです。
心の中の幸せを入れる箱に穴が空いているんだ
どんどん幸せが零れていく
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」善逸の回想
じいちゃんは「雷の呼吸」の一の型だけ使える善逸と、一の型だけ使えない獪岳に、雷の呼吸の継承権を共同で与えることを提案します。しかし、ヘタレの善逸と一緒に続けることに不満を持っていたのか、二人で「一人前」と見なされることが気に食わなかったのか、獪岳はその提案が不満でした。
善逸は獪岳が嫌いでしたが、修行においては一生懸命努力しており、その点では尊敬し、特別な存在だと認めていました。
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」
しかし、獪岳は善逸を嫌っており、絶対に認めようとはしませんでした。そして、自分を認めてくれない(と信じ込んでいた)じいちゃんにも不満でいっぱいでした。
じいちゃんは獪岳や善逸の二人に対して、技術は完璧ではないものの、二人で協力すれば必ず困難を克服できると信じていたのでしょう。しかし、獪岳の承認欲求は決して満たされず常に不満が募っていました。
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」
過去の過ちを反省するどころか、自分以外の人や環境が悪いとばかりに「不満」を持っていていつも心が満たされないでいた獪岳。
鬼殺隊に入隊
獪岳と善逸はじいちゃんの修行を終え、別々に鬼殺隊の最終選別を受けてそれぞれ鬼殺隊に入隊します。
そこでもやはり「不満」顔の獪岳。
獪岳が一の型を使えないことに対して陰口を叩いていた年上の隊員にたいして、あのヘタレで泣き虫な善逸が腹を立てて殴りかかります。善逸がいかに獪岳を大切に思っていたかがわかるエピソードですね。
暴力はダメだけどね!
しかしそんな善逸にも獪岳は「問題を起こすなカス」「恥だ」といって突き放します。
歩み寄る隙もない。涙
善逸はそれでも獪岳にときどき手紙を送りますが返事はなく、次第に疎遠になっていきます。
環境が変わっても獪岳の心は満たされることはなく、善逸に歩み寄る心も生まれることはなかった。
最強の敵との遭遇
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」
獪岳は上弦の壱・黒死牟という鬼舞辻に次ぐ最強の鬼に遭遇します。遭ったら最後、死ぬこと必至の最悪の鬼です。
獪岳は地面に頭をこすりつけ黒死牟にひざまずいて命乞いをします。
圧倒的強者に跪くことは恥じゃない生きてさえいれば何とかなる
死ぬまでは負けじゃない
引用:鬼滅の刃17巻145話「幸せの箱」獪岳の回想
「死ぬ」ことが「負け」であり、生きてさえいればいつか「勝てる」と信じていた獪岳。そして黒死牟の血を体内に受け入れて鬼と化します。
のちに獪岳が鬼となったことは、じいちゃんと善逸の耳に別々に入り二人は絶望します。
鬼殺隊員でありながら、鬼を倒すことではなく「生きること」を選び鬼となった獪岳。
「生」に執着したこの選択が、単純に「悪い」と言えるのか?
獪岳は本当に「クズ」だったのでしょうか?
獪岳はクズなのか?
獪岳は過酷な状況で生き抜き、悲鳴嶼と出会って幸せな時を過ごしました。しかし、寺の金を盗んだことで子どもたちに追い出され、鬼に遭遇した際、自分を守るために他の子どもたちと悲鳴嶼を犠牲にして生き延びました。
貧困と子どもであることに同情されますが、無実の子どもたちを死に追いやった罪は非常に重く、それは償い切れるものではないでしょう。その後、じいちゃんに拾われたにもかかわらず、善逸やじいちゃんを責め、不満ばかりでした。自らの過ちを認め改心することもありませんでした。寺の時の笑顔もその後は見られず、黒死牟の血を受け入れて鬼になったときも、自分の行動を正当化しました。
獪岳の笑顔は、寺のみんなで食卓を囲んだあの1度だけ!
何度か改善の機会があったにもかかわらず、獪岳は自分に都合の良い判断基準を持っていました。他人のために行動したり与えたりすることはなく、結局は人間に害を及ぼし、人間を喰らう鬼となってしまいました。
獪岳のこれまでの身勝手な判断基準と選択の積み重ねによって、最終的に「鬼」という恐ろしい存在、人間に害を与える「クズ」以下の存在となってしまった。
獪岳と善逸の選択の違い
同情の余地はありました。しかし正しい道を選ぶ機会はあったのに、それを選ばなかったのは獪岳自身の決断であったのです。
同じ孤児であった善逸との生涯の選択には大きな違いあります。善逸は絆を大切にし、他人のために行動し、信頼を築くことを学びました。獪岳から嫌われても、手紙を書き続け、彼が変わる可能性を信じました。このような価値観が、獪岳との違いを生み出し、獪岳が不満に向き合うことができなかったと考えられます。
まとめ
「獪岳はクズなのか?」という問いに対しては、
不満ばかりもらしていて、「誰のことも認めない」「何かを与えることもない」「ただ欲しがるだけ」という価値観からくる選択の積み重ねにより「鬼」になるという、取り返しのつかない過ちを犯し、その罪の重さにすら気づかないクズ以下の存在になってしまった、というのが筆者の見解です。
子どものころから貧しく理不尽な環境にあったことは同情してしまうものの、悲鳴嶼に助けられ、じいちゃんに助けられ、善逸に尊敬され、幸せになるためのきっかけはあったのにそのチャンスを逃したことが悔やまれる人物でした。
獪岳と悲鳴嶼さんの関係が意外すぎた!
もっと獪岳のことを知りたい!
獪岳はクズじゃない!
と思った方は原作をぜひ読んで感想をきかせてください!
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